
※これは日常の何気ない言動が犯罪になる可能性があるという注意喚起です。
道を歩いていた。
ただそれだけのことだった。
昼下がりの商店街の裏道。
コンビニの袋を提げた帰り道。
ふと前を見ると、向こうからとんでもない美人が歩いてきた。
一瞬、時間が止まる。
自然と目が奪われる。
目が合った──気がした。
慌てて視線を逸らす。
見てました、って顔にならないように。
すれ違って、なんとなく後ろを振り返る。
……彼女は、近くのアパートの門扉を開けて中に入っていった。
え、このアパートに住んでるのか?
そう思ったとたん、足が止まってしまう。
別に何をするでもなく、ただ、立ち尽くしてしまう。
どの部屋なんだろう。
そんな好奇心が頭をよぎる。
すると、2階の一室。
カーテンが、わずかに開いた。
……彼女だった。
こっちを見ていた。
確かに、目が合った。
次の瞬間、シャッとカーテンが閉まる。
その瞬間、自分が何をしていたのかに気づく。
向こうからすれば、さっきすれ違った男が、家の前でじっと立ち尽くしているのだ。
カーテンの隙間から、自分を見ていた。
それに、気づいた。
シャッターのように閉じられたカーテンは、明確な拒絶だった。
そのとき、自分のなかに冷たいものが流れた。
──ああ、これ、ストーカーじゃん。
そう思った瞬間、逃げるようにその場を離れた。
彼女のことは、知らない。
名前も、年齢も、性格も、なにも。
でも、ただ「美しい」というだけで、
知らず知らずに“関心”を超えて、“執着”に足を踏み入れていた。
悪気なんてなかった。
ただ、見とれて、気になって、立ち止まっただけ。
でも、それを“相手がどう感じたか”という視点が欠けていた。
この社会では、それがすべてだ。
好奇心は、一線を越えたとたんに、「犯罪の入り口」になる。