
多くの人が住宅ローンを「早く返さないと損」と考えています。しかし、その発想はすでに時代遅れです。低金利時代における住宅ローンは、単なる「借金」ではなく、賢く使えばあなたの人生を豊かにする「金融レバレッジ」でもあります。
繰上げ返済をする人に共通するのは、「借金は悪」「完済してこそ安心」という、いわば昭和的な金銭観。しかし本当にそうでしょうか?
「借金は悪」という昭和の常識に縛られていませんか?
住宅ローンは“借り得”の時代に突入している
現在の住宅ローン金利は、1%を切るような超低金利が続いています。これは、年利4〜5%を狙える長期投資と比べて明らかに“借り得”な環境です。
たとえば、以下の比較を見てください。
- 【繰上げ返済】300万円を繰上げ返済 → 住宅ローンの支払利息軽減額:約30万円(1%×10年)
- 【投資に回す】同じ300万円を年5%で運用 → 10年後:約490万円(運用益:約190万円)
このように、金利1%のローンを減らすよりも、年5%で資産運用した方が圧倒的にお金が増えるのです。
団信を削ってどうする? 保険金を減らす「繰上げ返済」の罠
住宅ローンには「団体信用生命保険(団信)」が付帯しており、ローン契約者が死亡・高度障害になった場合には残債が全額免除されます。言い換えれば、住宅ローンの残債=保険金と同じなのです。
つまり、繰上げ返済をして残債を減らすことは、「自分が死んだときに家族がもらえる金額をわざわざ減らす」という行為に他なりません。これは、保険の観点から見ても極めて非合理的です。
住宅ローン減税で“利息以上”に戻ってくる
住宅ローンには「住宅ローン控除(減税)」という強力な優遇制度があります。控除期間中(最大13年)は、年末のローン残高の0.7%が所得税・住民税から差し引かれます。
たとえば、ローン残高が3,000万円なら、年21万円の控除。これが10年続けば、合計210万円が戻ってきます。
ところが繰上げ返済をして残高を減らすと、この控除額も減ってしまいます。せっかくの減税チャンスを自ら潰しているようなものです。
「借金ゼロ」より「資産最大化」を目指すべき
繰上げ返済によって得られるのは「精神的な安心」だけです。しかし、金利1%以下のローンをわざわざ繰上げ返済してしまうのは、「超優良な借入枠」を捨てる行為です。
合理的な選択をするなら、
- 住宅ローンはできるだけ長期で借りる(例:35年)
- 浮いたお金はインデックス投資などで長期運用
- 毎年の住宅ローン控除を最大限活用
- 団信の保険効果も維持
という戦略のほうが、最終的な資産額は遥かに大きくなります。
結論:住宅ローンの繰上げ返済は「思考停止」
繰上げ返済を「正しいこと」と信じて疑わない人は、自分の感情で行動しているだけかもしれません。
もちろん、金利が高かったり、投資リスクが取れない状況であれば話は別です。しかし、低金利・インデックス投資・住宅ローン控除という現代の条件を考慮すれば、「繰上げ返済はしない」ほうが合理的です。
あなたのお金は「安心のために減らすもの」ではなく、「将来の自由のために育てるもの」。その第一歩として、ぜひ「住宅ローンとの正しい付き合い方」を見直してみてください。