
株式投資の世界では、「PER(株価収益率)」という指標はもっともよく使われる評価基準のひとつです。
PERが高ければ「割高」、低ければ「割安」といわれ、これを投資判断の軸にしている人も少なくありません。
確かに、同じ業種・同じ成長率の企業であれば、PERが高いほど利益に対する株価が高く、割高に見えるのは事実です。
しかし──この見方だけでS&P500を買わない判断をするのは、正直ナンセンスです。
なぜなら、PERの数字には市場の未来予測、つまり“期待値”が含まれているからです。
PERは「過去の利益」だけでなく「未来の期待」を映す
PERは、「株価 ÷ 1株あたり利益(EPS)」で算出されます。
計算式だけを見ると、あくまで“過去の利益”に対して株価が何倍になっているかを示す指標のように見えます。
しかし実際の市場では、投資家は未来を見ています。
「これからこの企業はどれだけ利益を伸ばすか」という予測が、そのまま株価に反映されます。
つまり、PERが高いというのは
- 単に利益に比べて株価が高いだけ
- ではなく、「今後の成長が大きく見込まれている」というシグナル
である可能性が高いのです。
S&P500は、米国を代表する500社の集合体です。
IT、ヘルスケア、金融、消費財など、多様なセクターが含まれ、その多くは世界的なリーダー企業です。
彼らに対して市場が高いPERをつけるのは、「これからも成長し続ける」という確信の裏返しとも言えます。
「割高だから買わない」は、成長シナリオを否定する行為
もしあなたが「PERが高いからS&P500を買わない」と判断した場合、それは市場が描いている成長シナリオを否定することになります。
言い換えれば、「米国企業はこれ以上成長しない」と信じるということです。
しかし、過去数十年の実績を見る限り、米国企業は何度も不況や危機を乗り越え、そのたびに利益と株価を更新してきました。
リーマンショック後も、コロナショック後も、最終的には市場は高値を更新しています。
長期的には、短期的な割高感よりも「成長を享受し続ける」ほうが投資成果に直結します。
現金保有はインフレと機会損失のダブルリスク
「割高だから様子を見よう」という選択は、一見安全策に見えます。
しかし実際には、現金で持ち続けることにはインフレリスクと機会損失リスクがあります。
- インフレが進めば、現金の購買力は確実に低下します。
- その間に株式市場が上昇すれば、あなたは投資機会を逃します。
特にS&P500のようなインデックスは、タイミングを完璧に見極めるのがほぼ不可能です。
「安くなったら買おう」と待っているうちに、株価はさらに上昇してしまうことも珍しくありません。
高PERでも勝つための戦略
PERが高い時期に投資する場合、もっとも有効な方法のひとつが時間分散(ドルコスト平均法)です。
毎月一定額を淡々と積み立てることで、
- 高値掴みのリスクを軽減
- 市場全体の成長を逃さず享受
できます。
また、短期的な価格変動に左右されず、「10年、20年持つ前提」で投資を続けることで、PERの上下は徐々に気にならなくなります。
結論:PERは“危険信号”ではなく“成長のサイン”かもしれない
PERが高いという理由だけでS&P500を買わないのは、市場全体の成長機会を放棄することに等しいです。
むしろ、PERの高さを「将来の利益成長への期待値」として受け止め、その根拠を分析しながら投資を続けるべきです。
S&P500の歴史が示す通り、短期の割高感に惑わされず、長期で市場と歩み続けた投資家が最終的に最も大きな果実を手にしています。